言葉にならない感情に、姿を与える
Dance as Wavesは、木の温もりが息づく三体の構造体が、光をともしたアームで空間に大きな弧を描くキネティック・インスタレーションです。三体はゆっくりと回りながら腕を広げ、ふいに沈み、また舞い上がります。
動くものに、生命を見てしまう
人は、動くものについ意図や感情を見出してしまいます。生き物の形をしていなくても、動きだけで機械が生き物に見えてくる。神山友輔が学生時代から「bio-likeness」として探求してきたこの現象は、いま、AIと言葉を交わすときにも起きています。相手が何かを考えていると感じる、その感覚から機械との対話が始まるのです。
タイトル「踊りという波」の主役は、あくまで「波」です。目の前にあるのは、回りながら上下する光の波。それを「踊り」と呼んでいるのは、見ている人のほうです。機械が踊っていると言い切るのではなく、そこに踊りを見てしまう人の側に立っています。
そして本作では、その波が三体のあいだで交わされます。一体なら個の振る舞い、二体なら呼びかけと応答。三体になって初めて第三者が生まれ、揃い、離れ、受け渡すように、関係が入れ替わり続けます。
重力を弱くしてみる
では、その踊りを機械でどう実現するか。鍵になったのは、重力と錘でした。
当初目指したのは、どの角度でも釣り合う、自重を補償した腕です。しかし腕を振り子としてClaudeとともに計算してみると、自重を補償しなければ腕はゆっくりとした回転では持ち上がらず、完全に補償すれば遠心力で開ききって戻らないことがわかりました。シミュレーターで重力を少しだけ弱くしてみると、腕はふわりと、手を挙げるように持ち上がります。
そこで本作では、アームの重心を回転軸に限りなく近づけ、モーメントを釣り合わせたうえで、反対側の錘をモーターで動かし、遠心力の効き方を変えています。モーターが動かすのは錘で、腕の動きを決めるのは遠心力と重力と慣性です。物理を引用することで、わずかな遅れやゆらぎを持つ、生き物らしい動きが生まれます。
木と金属が歩み寄る構造体
構造体の木材パーツは、カリモク家具の協力のもと制作しました。木のカバーは芯のカーボンパイプより軽いほどで、幅を持たせても軽いままでいられます。釣り合いで動きをつくる本作にとって、木は軽さと優しさを両立させる素材でした。一方で、見えるところすべてを木にはせず、機械が持つ緊張感を残しています。仕上げでは木の彩度を少し落とし、金属にはわずかな温かみを持たせ、二つの素材が互いに歩み寄るようにしました。

音と動きの関係
音楽は赤川純一(Syna Studi/o)が手がけました。目指したのは、三体のあいだで起きていることと同じ構図を、動きと音のあいだにもつくることです。三体は、あるときは揃って動き、あるときは一体だけが動き、あるときはそれぞれの波に従います。音と動きも同じように、音が先行する場面、振る舞いが先行する場面、互いに独立している場面があります。
そのために、制御システムは三体のモーターとLEDを動かしながら、音楽側とOSCで双方向にやりとりしています。腕の角度や回転の速さは音へ、音のリズムは機械へ。どちらが主かを、仕組みの側で固定していません。この制御ソフトウェアは、Claude Codeとともに開発しました。
音のところどころには、自然の音から人工的な音を、人工的な音から自然の音をつくる仕掛けを忍ばせています。野外で録音した自然の音と電子音を混ぜ合わせ、風を切る音にも、森の葉が揺れる音にも聞こえる音をつくる。どこまでが自然で、どこからが人工なのか、その境目が次第にわからなくなっていきます。
Machines of Loving Grace
Anthropic CEOのダリオ・アモデイによるエッセイに名を由来する展覧会。カリモク家具が培ってきた木工の技術や知見とClaudeとの協創を通して、AIが人のものづくりにどう寄り添えるかを探ります。真鍋大度氏の新作とともに出展しました。
2026年10月17日〜25日|KARIMOKU RESEARCH CENTER
主催:Anthropic
特別協賛:カリモク家具株式会社
Credit
Planning and Production: Spline Design Hub
Direction: Yusuke Kamiyama(Spline Design Hub)
Product Design: Mitsuru Muramatsu
Mechanical Design: Kaku Murayama (Spline Design Hub)
Simulation: Yan He
Sound Design: Junichi Akagawa (Syna Studi/o)
Prototype: Yuto Mitani (Spline Design Hub)
Spatial Design: Rinako Sonobe
Photo / Movie: Masaaki Inoue
Client:
Anthropic
Category:
Installation
Date:
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